告白しましょう。
だって、だってね。


際限なく貴方が好きなんだもの。




人を笑顔にする力




「ジロー、どこー?」
「あっ!だ、こっちこっち!」


立入禁止の札を越えて。
先日まで固く閉ざされていたドアを開けて。
ずっと向こうまで続く青空を見て。
そう呼びかければ。
応えてくれるのは貴方。


「屋上ってホント気持ち良いよねー」
「うん、このまま寝ちまいそうだC〜!」
「ジローはどこでも寝れるでしょーが」
「あ、そうだった」


給水タンクの日陰に2人で寝転がって。
暑くもなく、寒くもない温度に心地よさを覚える。
それにね。
隣に貴方がいるんだもん。
余計に、ってこともある。


「〜」
「なに〜?」
「お昼まで授業サボっちゃおーよ」
「ジロー、アンタ最近サボりすぎよー?
 跡部が担任が怒ってたって話してた」
「えー、跡部、にそんなこと言ってんのー?」
「一応ジローの保護者ってことになってるらしいよ、私」
「マジ?」
「マジマジ」


どちらからともなく、
笑い声が屋上を包んだ。

本当はね。
保護者なんか嫌なんだよ?
だってそれじゃあ。
恋人には昇格出来る道なんてないでしょ?

誰よりもジローのこと想ってる自信はあるよ?
だから、だからね。
貴方の1番になりたいっていうのは贅沢な願い?


今日はね。
一大決心をしてきたの。

確かにこの関係は楽よ?
でも、でもね。
私はジローの1番になりたい。

この関係が潰れることになろうとも。
私は貴方に想いを伝えたい。
たとえ後悔しようとも。
きっと言わないよりはマシだろうから。

触れられない失感も辛くて仕方ないの。
それならいっそ、そういっそ。
無くなってしまった方が楽かもしれない。


何度メールを交わしても。
何度電話を交わしても。
何度言葉を交わしても。


消えない少しの期待は時に残酷に胸を痛ます。
締め付けたり、温かくしたり。

ジローは罪作りよ。
だってへらへらした笑顔からは何も読み取れないんだもん。
少しは感情をあらわにしてくれたって良いのに。
少しは、さ。
私のことどう想ってるか表してくれたって良いのに。


「ジロー」
「ん〜?」
「今日は何時間サボるつもり?」
「んー、と居れる時間まで〜」
「……じゃあ後少しかも」
「―――――なんで?」


すごい勢いで起き上がって、
言葉通りの表情で私を見つめる。
声色が低くなって、少し怖い。
こんなジロー。
もしかしたら初めて見るかもしれない。


「色々あって、ね」
「……彼氏でも出来たの?」
「まさか」
「じゃあ!俺のこと嫌いになったの!?」
「え、そうじゃなくて」
「じゃあ何で?他に理由があるの!?」
「……」
「嫌だ」
「え?」
「俺、このままと一緒に居る!」
「ジロー」
「嫌だ!俺ここから離れないから!」
「聞いてよ、ね?」
「……」


ふにゃっと泣きそうな表情に崩して。
さっきまで笑顔だったのが勿体無いくらい。

きっと疑問はいっぱいだろうに。
それでもそれを押し留めて私をじっと見つめる。
私もゆっくり起き上がって、
同じ目線の位置で交じらす。

本当はね。
そんな顔させたくないんだよ?
だってジローには笑顔が似合うもの。
今日で見納めかもしれないから。
最後には笑ってて欲しいのに。

ジローの笑顔は確かに罪作りだけど。
でも、でもね。
確かに人を笑顔にする力も持ってるんだよ?

ジローが笑顔になると、
笑顔になる自分が居て。
それがとても心地よくて。
私は本能的にジローが好きだと感じるの。

悲しい顔しないで?
好きだから、大好きだから。
ジローの笑顔も、全部愛してるから。


「私ね、ジローのこと好きなの」
「え……?」
「驚くだろうけど、ホントのホント」
「マジ?」
「マジマジ」
「……」
「ずっと友達で居ようとも思ったんだけど、
 もう我慢の限界なんだ、友達でジローの隣に居るの」
「俺も嫌だ」
「え?」
「俺ものこと好き!大好き!愛してる!!」
「ジ、ジロー?」
「だから離れたくない!ずっとこのまま一緒に居たい!!」


さっきまで泣きそうな顔だったのに。
今では満面の笑顔で私にそう言う。
ほら。ほら、ね?
言ったとおりでしょ?


「……あははっ」



人を笑顔にする力があるって。



「が俺のこと好きって言ってくれてすっげぇうれCー!
 俺もずっとずっとずーっと前から好きだったんだよ!!」
「そう、なの?」
「だからココでを待ってるのが好きなの!
 授業出ちゃったら呼びにきてくれないじゃーん」


ジローがどうしてココに居るかなんて
今まで深く考えたことなかった。
ただ、授業サボって寝てるだけだって。
そう、思ってた。


「ジロー、好き」
「俺も俺も!のことすっげぇ好き!!」


ジローが笑うから、私も笑う。
それはまるで方程式のようで。
素敵な才能を武器にして、
その笑みで人を。


私を魅了する。


「じゃあこれで……」
「わっ」
「の膝枕の特権俺がもらったことになるんだよね〜?」


にしし、と笑いながら。
唐突に頭を私の膝に乗っけて。
それでも嬉しそうにジローはそう言う。


「そうだね」
「いやったぁー!うれCすぎるー!!」


頭を左右に振って。
それでも器用に落ちないのは。
私の膝から落ちたくない一心で。
ひどく可愛く思えるのは私だけ?


「保護者は卒業、これからはジローの彼氏だからね?」
「うんっ!は俺の彼女だかんね!!」


ジローは素敵よ。
もっともっと。
これからは彼氏として。


私を笑顔にさせてね。






+++++++++++
砂を吐くような甘いモノを書いてしまいました。
友人に捧げるつもりで書いた作品です、ハイ。
あのジロちゃん以上に可愛いでしょうか?(笑)
つ、つぎは、あの子を頑張りまふ……。


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