私の大好きな人へ。

伝えたい気持ちは言葉にして。
伝えたい気持ちを言葉にして。


だって言えなかったら自分が苦しいだけでしょ?



伝えたい気持ち...




夜の公園のベンチに二人で座って。
定番のカップルは愛でも語り合うのが普通でしょ?


「そんなに愛されてる自覚ない?」
「んなもんあるわけねぇだろ」


逸らすように帽子を深く被って。
私を見ようともしない。

言葉を心の中で呟くのは簡単で。
それなのにどうして口に出すのは難しいのかな?

素直に自分の気持ち言える女の子になりたいのに。
そんな女の子のことを羨ましく思えたりして。

自分次第だってこと分かってるのに。
その一歩を踏み出すのはとっても難しい。


「じゃあ愛してる自信は?」
「はぁ?」
「私を愛してる自信はある?」


背いた頬に両手を添えて。
無理やり自分の視線と交じらわす。

頬の体温は少し熱くて。
彼が照れてるのが鮮明的に伝わる。

震えることなく無言の時が流れて。
その無言に居心地の悪さを感じたりして。

つい口を。
開けてしまう私。


「……私はね、あるよ」
「……そうかよ」
「だってね、もし宍戸が女でも私好きになれるもん」
「はぁ?お前はまたわけわかんねぇことを……」
「失礼な!自信があるから言ってんの!!」


溜息を吐く宍戸の頬を。
手に力を込めて、ぐぐっと真ん中に押す。


「おっ、おいっっ!」
「宍戸が男でも女でも!私は宍戸自身が好・き・な・の!!」
「お前……」
「……ま、こんな女居ても気持ち悪いけど」

腕を握られて、力を弱める。
笑顔すると、彼は照れたように俯く。
帽子のせいで顔が黒くて様子が伺えないけど。

空に広がるのは満開の星で。
私達も生きていれば、星も生きていて。

生きる時間は違えど。
お互いの名前さえ知らないけれど。

無限に広がる星は温かくて。
性別なんか関係なく、生きている。


「宍戸は男で、私は女でこうやって堂々としてられるけど」
「……お前何言って」
「同姓だったら夜の公園で二人で居るのってきっとおかしいのよね」
「……」
「偶然のような必然のような……私達は男女で生まれて」
「……」


そっと宍戸の頬に再び触れると。
彼は少し微動して、まっすぐと私を見つめる。


普段なら照れて俯くのにね。


「出会えて……こうやって触れ合えてる」
「……

「何か、素敵だよね。何か、すごいよね。何か運命的だよね。」

「……」
「……激ダサ、かな?」
「……激ダサ、だな」
「私が?」
「……俺らが」


少し俯いて。
頬に当てた手を今度は宍戸がそっと握る。
そのまま宍戸の膝に向かって、止まる。

あの告白はきっと一生忘れない出来事。
私達にとって忘れられない事件。


重大で。
そして切ない事件。


「でも、本当はね」
「あぁ?」
「良かったなんて思ってるの、宍戸が男で、私が女で」
「……」
「……悪いけど、こうやって堂々と仲良く出来るもの」
「……そうだな」
「神様に感謝しちゃおっかな」
「お前激ダサ……―――――しろ」
「え、何て?」


握り合った手から伝わる体温と。
貴方の気持ちの海に浸って。


「感謝するなら俺にしろって言ってんだよ!!!」


ぶっきらぼうにそう怒鳴って。
握った手に力を込めて、またそっぽを向く。
真っ赤だって分かってるから無駄なのに。

湧き上がるものを押さえられなくて。
私は夜だとか宍戸の前だとか関係なく大声で笑った。

お腹が痛くなるまで笑って。
宍戸はうるさいと私の額にデコピンして。


宍戸に感謝しながら。
私達はまた明日を歩いていく。






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何か色々なCDを聞いた結果こうなりました。
男女で出会える確率って高いのか低いのか。
永遠に解けないような謎のような気がします。
(ちなみに宍戸さんはあの子に告白された設定。犬ですね〜。)


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