今日は快晴。
待ちに待ったデート日和ってヤツで。
お気に入りのワンピースを着て。
さて、貴方が待つ場所へと急ぎましょうか。
将来の約束
約束の時間10分前。
初デートだから遅れちゃまずいし。
少し風が強くて。
何度も鏡を見て髪の毛を直す。
けど、やっぱり髪はちゃんと決まらなくて。
一度溜息を吐いて、諦めて。
待ち合わせの銅像につまらなく凭れて。
「……遅いな」
そう呟いて。
バックの中から携帯を取り出して。
ディスプレイを確認すれば。
――――――約束の時間20分オーバー。
あの弦一郎が時間にルーズな訳がないし。
携帯のディスプレイをじーっと眺めてみる。
何か他に用事が出来た?
いや、もしかして事故にあったんじゃ?
それとも寝坊?病気?
それだったら電話の一つもくれるよね?
鳴ることない携帯を見つめて。
私の思考は弦一郎の安全で囚われる。
学校では当然のように毎日会って。
というか、学校も貴方が居るから行っているようなもので。
貴方が居ない学校なんて行っても仕方がないもので。
何故こんなに好きなのか。
少し(いや、かなり)古い考えを持っていて。
曲がったことが嫌いだし、ちょっと変わってるし。
それでも優しくて。
気遣いだけは誰にも負けないと私は思ってるし。
初めてのデートで。
遅れてくるような男じゃない、よね?
いや、でも実際遅れてるんだけど。
何があったんだろう。
――――――ピルルルル。
ふいに携帯が鳴った。
最初は弦一郎からの着信は着メロだったんだけど。
「非常識だ」って怒られてからは普通の着信音。
そんなことを考えるのも惜しくて。
私はディスプレイに表示された名前に反応して。
すぐに出る。
「弦一郎!?」
『……か?』
遅れてるのにも関わらず。
貴方の態度は相変わらずで。
それが逆に私を安心させる。
私っておかしい?
だって普段通りの方が安心するでしょ?
「今、ドコに居るの?」
『……待ち合わせ場所だが』
……はい?
いや、私も今待ち合わせ場所に居ますよ。
「何言ってんの?私も居るし」
『そっちこそ何言ってるんだ?』
「待ち合わせ場所は青春台駅の南口でしょ?」
『……ココは南口だぞ』
「私も南口に居るわよ?」
別次元の南口に居るのだろうか。
いや、そんなことがあるはずない。
いくら弦一郎が変でもそれはありえない。
……多分。
いや、絶対と言いたい。
『……銅像の前だよな?』
「銅像の前よ」
『ドコに居る?』
「だーかーらっ!銅像の前だってば!!」
『……今、声聞こえたぞ』
「電話してるんだから当たり前でしょ――――――っ!?」
いきなり目の前が暗くなって。
少し顔を上げれば……
弦一郎の姿、が。
「な、なん……!?」
上から見下ろす弦一郎の顔は。
逆光のせいで読み取ることは出来なくて。
弦一郎はゆっくりした動作で携帯を切って。
私の固まった手から携帯を取って切って。
「俺は後ろに居たんだぞ」
それだけ呟いて。
彼はくるりと反転して。
私の顔を見ようとしない。
もしかして、怒ってるの?
でも怒られる原因がよくわかんないよ。
私だってちゃんと待ち合わせ場所に居たでしょ?
そりゃ、何故か反対側に居たけどさ。
それは不慮の事故ってヤツでしょ?
大体この銅像が高いのがっ
――――――ってモノに八つ当たっても仕方ないわね。
「弦一郎……?」
「」
「は、はい?」
いつのまにか腕を組んでいて。
私を見下ろす弦一郎はまるで旧家の主みたいで。
見えない威厳が私を縛り上げていく。
「そんなにおっちょこちょいでは」
「うん……?」
いつもと変わらない態度。
いつもと変わらない口調。
怖いけど、安心するわ。
だって。
「おっちょこちょい」なんて。
今時誰も使わないわよ?
笑いそうになる衝動を抑えて。
真剣な眼差しで弦一郎を見つめ返す。
「俺の妻は務まらんぞ」
――――――はい?
弦一郎。
今、貴方何を言いました?
つ、妻ですって……?
妻ってのは
自分の妻(つま)のことを他人にいうときに用いる語。
家内(かない)。女房(にようぼう)。
三省堂提供「大辞林 第二版」より
ってことよね?
「?」
「え、あ、はいっ!?」
「聞いてるのか?」
「あ、うん、もちろん……」
「なら、今度から気をつけるんだな」
これは。
世間一般で言えばプロポーズってヤツなんじゃないの?
分かってる?
自覚あるの?
ねぇ、弦一郎ってば。
「返事は?」
「は、はい……」
「よし、行くぞ」
私の手を引いて。
二人で人ごみを進む。
「弦一郎……」
「なんだ?」
「……何でもない」
手のひらが汗かいてるよ?
もしかしてちょっとは緊張してたの?
笑うときっと怒るから。
今日は気付かない振りしてあげる。
将来の約束で許してあげることにしましょう。
これでおあいこだね。
私達、同じ位置に立てるよね。
愛してる。
いつか言える日を夢見て。
私達はまず、進む道を進めば良いんだね。
+++++++++++
っつーか主人公悪くないですよね(笑)
お互いの間違いでも真Dの意見が通ってしまう。何故だ。
真Dが一番最初に付き合った人が妻になりそうだと思うのは
私だけでしょうか?
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