俺って頑張ってるよね?
最近かなり頑張ってると思わない?

南的にはまだまだらしいんだけど。
ちゃん的には。


どう、かな?




ラッキーorアンラッキー?




同じクラス。
しかも席が前後。
こんなにラッキーなのってないよね。

でも。
ラッキーがあっても。
そのチャンスをモノに出来ないってどうよ?

前からプリントが配られてきて。
ちゃんは前を見たまま俺に渡すよね?
もしかして俺って嫌われてる?
だっていつも後姿しか見れないんだよ?

一言でもお話したいのに。
それさえも許してくれないの?
教室で見る笑顔しか俺には与えてくれないの?

本当は。
俺って結構独占欲強いんだよ?
その笑顔だって独り占めしたいとか思ってる。
一見へらへらしてるけど。
それは見せかけだけなんだ。


ちゃんは、信じてくれる?




ちゃんは美術部で。
最近は教室で友達と窓からの風景描いてるよね。
テニスコートからその姿が見えるから。
意味もなく部活にも精が出て。

汗が飛び散って。
それが夕日に照らされてキラキラ光って。
2年生の相手をさせられてつまらなくても。
ちゃんの瞳に映るならやる気だしてる。

万が一ってこと考えられないわけないじゃん?
俺ってラッキー千石って異名持ってるくらいなんだし。

虎砲とか、ダンクスマッシュとか。
必殺技決まった時は決まってちゃんが居る教室を見る。

最初の方はさ。
俺の勘違いかもしれないけど。
ちゃんは俺の方を見てたよね?
俺の居るテニスコートを。
その瞳で眺めてたよね?

俺がいつもいつも。
得点決める度にちゃんに方を向くから。
それが定番になっちゃって。
ちゃんは決して俺の方を向かなくなっちゃった。
その後は何だかやる気が出なくて適当なプレー。

やっぱり、勘違い?
俺じゃなくて別のヤツ見てた?
それとも。
俺のことがやっぱり嫌い?

どうしてだろう。
俺ってこういうヤツだっけ?
結構誰とでも話せるヤツじゃなかった?
人見知りなんか絶対にしないし。
誰とでも仲良くなれる自信はある。
もちろん、それは友達としてだけど。

だけど。
ちゃんの前では。
どうしても思い通りに出来ない。
自分が動かない。
どこかブレーキをかけてしまう。

ねぇ、これってさ。
ちゃんに嫌われたくないんだよね、俺。
ちゃんに軽い気持ちで近づくことなんて出来ないもん。
今までとは違う想いだって自分でも分かってるから。

だから慎重になって。
自分から中々話せなくて。
教室での笑顔しか見れなくて。
本音はあの笑顔を独り占めしたいのに。

今までの俺。
いろんな女の子と付き合ったけど。
本当に、そう、本当に。
ちゃんが大切だって想えるんだ。

抱きしめたい。
この腕の中に収めたい。
ぎゅっと抱いてちゃんの体温を感じたい。

こんな俺だけど。
本当に信じて欲しいんだ。
上手く言えないけど。
ただ、信じて欲しいんだ。

俺の愛の言葉までも嘘だと思わないで欲しい。
俺のちゃんへの愛を、信じて欲しい。




今日は実は誕生日で。
朝からいろんな人におめでとうと言われてるけど。
本当に言われたい人から言われないし、さ。

部室に帰って。
教室に財布を忘れたのを思い出して。
今日はちゃんとも目も合わなかったし。
朝は遅刻して部活の大事なミーティング忘れてたし。
授業サボってたら生活指導のジジイに見つかるし。
誕生日なのにアンラッキー日と悶々と暗い廊下を歩いてたら。

俺のクラスの電灯が。
周りの暗闇に遠慮するように点いていて。
俺が校舎に入るときは点いてなくて。
結構怖いかも……なんて思ってたから。


「ラッキー♪」


ガラリ、と大きな音を立てて入ると。
そこには。


「千石、くん……」


大きなスケッチブックを膝に乗せて。
鉛筆を横にして持つちゃんの姿。


「……こ、こんな時間まで何してんの?」
「え、あっ!いやっ!!」
「へ?」


大慌てでスケッチブックを閉じて。
勢い余ってそのまま床に落とす。
俺は訳も分からずに頭上に?マーク浮かべて。
そのままドアの所で突っ立ってる。


「……千石くんは?」
「え、俺?」
「そう、教室に用事?」
「ああ、教室に財布忘れちゃって!ドジだよね〜」
「そう」


そっと息を吐いてる姿。
俺には見えてるよ?
何で安心してるの?
俺にはやっぱりよく分かんないよ。

ああ。
こんなラッキー滅多にないのにさ。
なんで俺ってば無言で机に向かってんの?
確かにちゃんには近づいてるけどさ。
それじゃあ意味ないっての。

ねぇ、ちゃん。
俺は結構単純だからさ。
ちゃんが一つ笑顔をくれれば。
俺って多分勇気が出ると思うんだよね。

その勇気さえあれば。
こんな俺でも。
ちゃんの全てを包み込む優しさは持ってるよ?
この愛でカバーしてみせる!

ねぇ、笑って?
こっちを見て笑って?
俺の方を見て笑ってよ?
ほんの微笑みでも構わないから。
俺だけに微笑みをください。

そしたら。
外はこんなに暗闇だけど。
ちゃんの笑顔は太陽だから。
きっと俺の心は暖かくなって。
ちゃんに、好きだ、って言えるはず。

大切なんです。
抱きしめたいんです。
守ってあげたいんです。
これから先ずっと、ずーっと。
何年先もずっとずーっとです。
どうか、どうか、お願いします。




心の中ではそんなこと思ってるのに。
実際言えないなんてホント損だよね。
普通なら言えるのにさ。
本当に好きな人の前じゃ言えないなんて。


「じゃあね」


俺はそれだけちゃんに告げて。
教室を去ろうと180度回転して歩き出す。
誕生日なのにさ。
やっぱり今日はアンラッキーデイなんだ。
こんなの自分じゃないって分かってても。
なんで言えないんだろうね。
俺って本当は意気地なしなのかも。


「千石くん!」


幻聴なら俺って赤っ恥。
でも、その声の主は確かにちゃんで。
振り向くと。
頬を少し赤く染めて、大きなスケッチブックを抱えて。

小走りに俺に寄って来て。
ひどく、小さく。


「お誕生日、おめでとう」


そう言って。
俺の胸にスケッチブックを押し付けて。
そのまま教室を出て行った。
廊下に響く足音はどんどんなくなって。
ついには静寂だけが残って。

胸に預けられたスケッチブックは。
さっきちゃんが慌てて閉めて落としたヤツ。
そっと、おずおずと、それを開く。

最初は白紙。
その次も、白紙。
その次も、その次も白紙。

パラパラとめくっていくと。
ついに最後のページ。
そこには。
俺の、顔があった。

まだ下書きなのかな。
鉛筆で描かれたそれは所々×と描かれていて、
消されていない部分もあったし。
でもきちんと俺の顔が描かれてる。

それは。
俺の満面の笑みで。
俺が教室を見るときの笑みで。
ちゃんを見つめる笑みで。

俺は本当に嬉しくて。
嬉しさを噛み締めるように地団駄を踏んで。
そのスケッチブックを、
ちゃんの代わりに抱きしめる。

ねぇ、これってさ。
もう"好き"って言われたようなもんじゃない?
俺の勝手な解釈すぎるかな?
でもでも!これってそれしかないと思わない?

今日一日のアンラッキーは。
もしかしてこのラッキーのための伏線?
さきに不幸を逃がして、後で幸福を得るってヤツ?

そう思うと。
もう嬉しくて、嬉しくて。
もう1度。
今度はさっきより強く地団駄を踏んだ。

ちゃんの荷物はまだ机の上。
その内帰ってくるだろうから。
俺は待っててあげる。

忘れないでよ。
俺、いつもちゃんの傍に居るよ?
信じてくれるなら。
迷惑なくらい一緒に居てあげる。

この気持ちを忘れない。
絶対にずーっと大事にする!
時や季節が移り変わっても。
何年先もずーっとずーっと。
ちゃんの傍に居るから。


だから。
同じ位置で。
同じ景色を見ようね。


帰ってきたら。
そう、伝えるから。






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今回はキスプリの歌に沿って書いてみました!
こんなの初めてなので上手くいってるか分かりませんが(笑)
清純!お誕生日おめでとう!!
しかし、この話。主人公視点も書きたい。
もしかしたら告知ナシでこのページでアップしてるかもしれません(笑)

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